犬は人の言葉をどこまで理解している?科学的視点から解説
犬を飼っていると、「この子、ちゃんと私の言っていることが分かってるのかな?」と感じる場面がありますよね。
例えば、「ごはん」「おすわり」「おいで」などの言葉に素早く反応したり、声のトーンや表情を読み取って行動を変えたりする姿は、まさに“言葉を理解している”ように見えます。
では、実際に犬はどこまで言葉を理解しているのでしょうか?
本記事では、科学的な実験結果や脳科学の研究、世界的に有名な犬の実例をもとに、犬と言葉の関係について深掘りします。
犬は「音」だけでなく「意味」も理解している?
■ 脳科学の研究から見えてきたこと
2016年、ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、fMRI(脳機能MRI)を使って犬の脳が人の言葉をどう処理しているかを調べました。
結果、犬は人間のように「言葉の意味(語意)」と「話し方(イントネーション)」を別々の脳領域で認識していることが明らかになったのです。
たとえば、「いい子だね(Good boy)」という言葉を褒めるトーンで話しかけると、犬の左脳で語意を、**右脳で感情(音調)**を処理していることがわかりました。
つまり、犬はただの音の連なりとしてではなく、“意味ある言葉”として人の話を聞いている可能性があるということです。
単語を1000語以上覚えた“天才犬”の存在
犬の理解力に驚かされた例として、アメリカの**ボーダーコリーの「チェイサー」**が有名です。
■ チェイサーの驚異的な記憶力
この犬は、実に1,022個もの単語を覚えたと言われています。
彼女はおもちゃに個別の名前をつけ、それを「持ってきて」と指示されると、正確に区別して持ってくることができました。
研究を行ったのは心理学者のジョン・ピリー博士。
博士は、チェイサーが名詞だけでなく、動詞や前置詞のような概念も理解していることを観察しました。
この例からも、犬には一定レベルの言語理解能力が備わっていることが証明されているのです。
犬は声のトーンと感情も読み取っている
言葉の意味だけでなく、犬は私たちの声の調子や感情にも非常に敏感です。
■ 「声」と「感情」はセットで伝わる
先述のハンガリーの研究でも、犬はポジティブな言葉+ポジティブなトーンのときに、もっとも脳の報酬系(嬉しい・うれしいと感じるエリア)が活性化すると判明しています。
また、2014年に行われたオーストリアの研究では、犬が人間の表情(喜怒哀楽)を正しく見分けられることも明らかにされました。
これにより、犬は単に言葉を聞いているだけでなく、飼い主の気分や意図まで汲み取っているということが分かっています。
犬が理解しやすい言葉とは?
■ 短くて一貫性のある言葉がベスト
犬が言葉を理解する上で重要なのは、**「繰り返し」と「一貫性」**です。
以下のポイントを押さえると、犬が言葉を覚えやすくなります。
- 単語は短くて明瞭に(例:「まて」「ごはん」「おすわり」など)
- 家族全員で言葉を統一する(「トイレ」と「おしっこ」など混在させない)
- 声のトーンと態度も一致させる(褒めるときは明るく、叱るときは低めの声で)
このように、一貫した伝え方をすることで、犬は人間の言葉をより早く正確に覚えることができます。
犬の理解力に関する注意点と誤解
■ 言葉を「完璧に」理解しているわけではない
ここで注意したいのは、犬が人間のように文法や抽象概念を理解しているわけではないということです。
多くの場合、犬は以下のような情報を組み合わせて理解しているにすぎません。
- 音のパターン(単語)
- 声のトーン
- 飼い主の表情や仕草
- 過去の経験・状況
つまり、「今この場面でこの声を聞いた=こうすればいいんだな」と連想的に学習しているのです。
人間のような論理的理解ではないことは、理解しておく必要があります。
飼い主の気持ちは犬に伝わっている
犬は言葉以上に、**「気持ち」や「態度」**を感じ取っています。
嬉しそうに話しかけると尻尾を振り、怒って話すとおどおどする。
その反応は、私たちが発する非言語的メッセージを敏感に察知している証拠です。
だからこそ、愛犬と向き合うときは、言葉と態度をセットで誠実に伝えることが大切です。
犬と人は「言葉を超えてつながっている」
最新の科学は、「犬は私たちの言葉を部分的に理解している」ことを明らかにしてきました。
しかし、犬との関係の中で本当に重要なのは、**お互いを信頼し合う“心の対話”**ではないでしょうか。
言葉も表情も、すべてが愛情の伝達手段。
犬はそれらを敏感に感じ取り、私たちの想いに寄り添おうと日々努力してくれているのです。
まとめ|犬に伝わる「言葉」を意識しよう
- 犬は言葉の「意味」と「トーン」を区別して理解している
- 脳科学で、犬の高度な処理能力が証明されている
- 言葉だけでなく、感情や表情も一緒に伝えている
- 一貫した言葉がけが、犬の理解力を高めるポイント
- 最後に大切なのは「心と言葉」の両方でつながること
犬とのコミュニケーションは、毎日の積み重ねです。
今日からぜひ、言葉の使い方や表情の伝え方を少しだけ意識してみてください。
きっと愛犬との距離が、ぐっと縮まるはずです。